あなたの身近に認知症の方はいらっしゃいませんか?
新しく記憶することが難しかったり、暴力的になったり、幻覚や妄想したりと人によって症状は様々です。
なぜならば、脳内の場所や病気の原因が違うからです。
その特徴や症状によって大きく4つに分類するようになりました。
- アルツハイマー型認知症
- 脳血管性認知症
- レビー小体型認知症
- ピック病
認知症は治りますか?
結論から言いますと、完治はしません。
ただ、認知症の進行を軽減するしたり、進行のスピードを緩やかにすることは可能です。
認知症の治療方法は?
・服薬療法
ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチンなど
・認知症者と適切な関わり方を持ち続けること
バリデーション、目線、声のかけ方、距離感タッチング、受容、否定をしない など
アルツハイマー型認知症とは

脳に老人班(アミロイドβ・タンパク質)といわれる物質が広がり、海馬を中心に脳の萎縮が進み、認知症の症状が現れます。ただし、脳の萎縮があっても場所によっては認知症の症状が出ない人もいます。
高齢になればなるほど脳の老化は進むと言われていますので、平均寿命が男性で81.47歳、女性で87.57歳ですので女性になりやすい傾向と言えます。
症状はなだらかに進み、始めは少し前のことを思い出せないという記憶障害が起こります。症状が進んでいくと時間に関すること、日付が分からない、朝・昼・夜が分からない(見当識障害)、実行機能障害(段取りをつけて物事を実施できない)、判断力の障害などが出現します。
その後、失語(ものの名前がうまくいえない、相手のいったことをおうむ返しする、など)、失行(服のボタンがうまく止めることができなくなるなど) 、失認(感覚器に異常がないにもかかわらず、目や鼻などの五感で周りの状況を把握することが低下すること)なども出現します。
その他、人によっては、妄想や徘徊が見られる場合もあります。進行すると、身内であっても認識できなくなり、最終的には全面的な介護が必要となり寝たきりとなります。
脳血管性認知症とは
日本では会社で働きストレスで疲れた、男性に多い症状です。
脳内の血管が詰まったり出血することで症状が始まる為、突然に起こります。
脳の部位によって、症状が違い、知的能力はまだら状に侵されていきます。手足の麻痺、構音障害、飲み込みの障害、感覚障害などの神経症状を伴いやすいのが特徴です。
発作のたびに階段状的に、進行が悪化していきます。
感情をコントロールできない感情失禁が起こることがあります。
リハビリや、手術で回復が期待できます。ただし、高齢者の場合、手術は体力が必要なので、本人や、家族さんの意見を尊重します。
レビー小体型認知症とは
脳内にレビー小体というタンパク質が広がり脳を委縮させます。
特に後頭葉、情報を処理する部分ですので、幻覚・幻視などの症状があります。
男性に多い病気です。女性と比べて2倍
進行はアルツハイマー、脳血管よりも比較的速く進みます。
機能低下が全体的に進みますが、特に、呑み込み、嚥下機能が悪くなりやすいので、誤嚥して、肺炎になる可能性もあります。
被害妄想が起こりやすく、本物の家族ではないと思います。
生々しい幻覚(実際にないもの)が見られ、隣に人が座っている、床に水が流れていると感じます。
妄想と幻覚が混ざることもあります。寝ているときに布団が動いている、浮気をしているなど。
日内変動が見られます、時間帯は決まっていませんが、脳が覚醒しているときは普通の会話ができますが、脳が働いてないときは反応がなくぼーっとしていることもあります。
パーキンソン病の症状(筋肉のこわばり、手の震え、動作の鈍化)などがみられることがあります。
薬の調節が難しい、パーキンソンの薬を飲むと副作用で精神が不安定になるし、精神の薬を飲むと運動機能が悪くなります。
①幻覚幻視②日内変動③パーキンソン症状はレビー小体の3大症状と言われています。
ピック病とは
前頭・側頭葉の萎縮が特徴で、進行はゆっくりです。
40~60歳という若さで発症しやすい。
記憶は比較的保たれます。例えば徘徊に出ても迷子にはならずに帰ってくることができるので、記憶は保たれていることが多くみられます。
常同行動、毎日同じものを食べ続けたり、同じ言葉を何度も繰り返します。決められた時間に散歩に行くなど、もし「雨だから今日はやめたら」と言うと、自分の行動を制止されたと感じ、暴れまわる可能性があります。
情緒不安定で笑っていたのに突然泣き出したり怒ったりします。
人格の変化、以前はおとなしい性格だったのに怒りっぽくなる、人を無視したり、バカにした態度をとります。また異常行動が増え、人の家に勝手に上がったり、お店で万引きをしたり、痴漢行為、不潔でも気にならない、など自制がなくなります。
本人は病気という自覚がありません。周囲から見てもあまり認知症らしくない症状のため、単なる性格の変化と誤解されて病気の発見が遅れがちです
ピック病は「人間らしさ」を一気に奪う脳の病気です。前頭葉と側頭葉に異常が起きて理性的な行動を取ることができなくなり、感情の障害、意思の欠如、運動性言語障害、判断力低下、記憶低下などが現れるようになります
日本の認知症高齢者の人数

令和元年の厚生労働省老健局「認知症施策の総合的な推進について」によると、日本の65歳以上の高齢者の方の、認知症の方の数は2020年の段階で約602万人に達しているとされます。
これは65歳以上の人口の約6人に1人の割合です。
今後も増加すると予測され、2025年には65歳以上の高齢者の5人に1人、人口に換算すると、17人に1人が認知症を発症すると考えられています。
中核症状と周辺症状

中核症状とは→認知症である以上、必ず発生するもので発生を抑えることはできない
周辺症状とは→周辺症状(BPSD)は人によって発生したりしなかったりする
記憶障害
アルツハイマー病の記憶障害は、先ほど覚えたものをすっかり忘れてしまうという特徴があります。
健康な人でも物忘れはあるのですが、ヒントを与えられると思い出します。 これに対して、アルツハイマー病の記憶障害は経験した事自体を忘れてしまいます。
たとえば、財布の置き場所を忘れた場合、記憶障害の中核症状のみですが、「財布が盗まれた」といった妄想(物盗られ妄想)という周辺症状に発展することがあります。
失語 言語障害
物の名前が分からなくなります。
人と会話が出来なくなるため、自分から話しかけることをしなくなります。
失行(しっこう)
道具を上手に使うことが出来ない状態です。
服をきちんと着ることが出来ない、お箸を上手に使って食事をする事が出来ないなど、手や足はきちんと動くのに、行為に至ることができなかったり、順序がばらばらになったりします。
失認(しつにん)
視力に異常はないのに、視界にあるものを認識したり区別できなくなる状態です。
自分のいる場所が分からなくなったり、物体の見分けがつかなくなってゴミ箱をトイレと間違えたりします。
実行機能障害
計画を立てたり、実行することが出来なくなります。段取りが出来なくなります。
例えば、夜ご飯に○○を食べたいと思います。家の冷蔵庫に○○がないから市場で買い物します。野菜を切ります。焼きます。食べます。この順番が分からなく次の行動ができません。
市場への行き方も分からないかもしれません。
見当識障害
今日は何月何日、朝、昼、夕が分からない、時間が分からなくなります。
判断力低下
認知症になると、素早く判断するという事が特に苦手になってきます。
例えば、車の運転をしているときに、前にゆっくり走っている車がいました、このスピードだと前の車にぶつかるから、ブレーキを踏んでゆっくり走らないといけないなと判断するけど、判断力が低下すると危ないと思うだけで、どうしたらいいのか判断できなくなります。
情報処理能力の低下
予想外のことが起こると混乱してしまいます。
頭の中に突然新しい情報が入ってくると、その情報を処理する能力がないため、脳は受け入れることが出来ず、混乱するのです。
また長い話も同じく情報を処理できなくなるので混乱します。
代表的な周辺症状
中核症状に身体的・心理的・環境的要因が加わることにより周辺症状が発生します。
つまり、高齢者への関わり方、ケアの仕方によって周辺症状が現れたり、消えたりするのです。
幻覚
特にレビー小体型認知症では、「壁に顔が見える」「虫が見える」といった幻視が出現します。
夜に見える事が多く、電気をつけると消えてしまう事が多いです。
妄想
現実は違うのに、本人にとって真実であると信じ込んでいる症状です。
財布の置き場所を忘れて、探しても見つからないので財布を誰かに取られたといった妄想などがあります。
興奮
怒ってしまい興奮している状態です。暴力に発展する場合もあります。
興奮が出現すると介護する人の負担度は飛躍的に高くなります。薬剤投与により比較的静まりやすい症状のひとつです。
不安
過剰に緊張している状態です。人ごみに出かけると過剰に緊張するので、家の中に閉じこもりがちになります。
うつ
死にたいと涙を流します。初期の段階では、うつ病なのか認知症の症状(仮面認知症といいます)なのか区別が難しい場合があります。
多幸
うつの反対の状態で、場にそぐわない程幸せそうにしている状態です。
無為
自発性が低下している状態です。以前まで興味を持って楽しんでいた趣味や、家事をしなくなります。
脱抑制
人前では通常行わない事を平気で行う様になります。ピック病(前頭側頭型認知症)でよく見られます。
易刺激性
1分前まで機嫌がよかったのに、1分後に怒っているという様に、気分の著しい変動があります。色々な認知症で見られますが、血管性認知症でよく見られます。
異常行動
徘徊や机をたたくなどの繰り返し動作が特徴です。
食行動異常
アルツハイマー病だと先ほど食べた事を忘れ、何回も食事を取り体重が異常に増加する場合があります。
睡眠
昼夜逆転し夜中にも関わらず「仕事に行く」などと言い家族を起こしたりします。
認知機能変動
レビー小体病では認知機能の変動が著しいと言われています。日によっては別人の様に見える事があります。
認知症者の介護、家族の苦悩と困難

認知症高齢者の家族はこのような迷惑行為により常時気の抜けない状態で介護を続けており、ストレスや疲労が溜まりやすいものです。
家族にとっては、親や配偶者が認知症になったという事実や、様々なことが今までのようにできない状況を心理的に受け入れられず、周囲に相談することさえも抵抗がある場合があり、困難を抱え込みやすい環境にあるとも言えるでしょう。
また、認知症によって引き起こされる症状は、それが疾病によるものだとは理解していても、「なぜそんなことをするのか」、「どうすればよいのか」がわからず、家族の混乱を招きやすい面があります。
さらに、場合によっては高齢者が家族の言うことを理解できないなどのために、家族を叩いたり怒鳴ったりしてしまうことがあり、これらが認知症高齢者に対する虐待の大きな要因となっている可能性もあります。
このような事例では、まさに高齢者と家族が双方とも支援すべき当事者であり、周囲の支援者はそのことを常に念頭に置いて、双方へのできうる支援策について検討していく必要があります。
閉鎖された介護は辛く苦しあり虐待へとつながりやすいため、家庭の問題ではなく日本社会の問題として解決しなくてはいけません。
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