いきなり質問ですが、手間のかからない利用者さんにしている無意識なことは何でしょうか?
結論から先に述べると”後回し”です。
どうしても認知症状が重い人や身体介護を必要とする人を優先してしまいますし、そもそも十分な配置人数ではありませんからね。
ご利用者さんへ費やす時間の割り振りを考えてみてください。
明らかに偏りがあるはずです。
介護の施設ではよくしゃべる人や口数が少ない人、寝たきりでしゃべれない人など様々いますが、職員はよくしゃべる人にだけ時間を費やしがちになっていませんか?
口数が少ない人は面倒がかからずお世話しなくて楽でいいわ。と私は考えていました。
しかし、バリデーションの手法を勉強してからいろいろと考えさせられることがあったのです。
お世話が必要でないときは”職員の休憩時間”ではありません。
暇なときにどれだけの時間を高齢者のために使えるかがあなたに問われています。
だからといって頑張りすぎると自分がつぶれてしまうので適度が一番ですよ。心が悲鳴を上げる前に相談してみてください。
言語コミュニケーションが可能なお年寄りと接する時の方法とポイント
何度も繰り返し同じことを話す人の場合
スタッフ:「お子さんは、何人いるんですか?」
Sさん:「うーん、何人じゃったかな?」
スタッフ:「3人ですか?」
Sさん:「そうじゃ、何で知っとるん」
認知症のSさんとの日常の会話ですが、毎日同じ内容の会話をしていますのでスタッフはSさんの個人情報や、会話で知り得た情報はすでに把握しています。
例文のように相手の記憶を試す行為は相手を不安にさせたり疑いを持たれ介護拒否につながります。
あえて聞くのならば会話の最後まで初めて聞いたふりをしましょう。
会話は好きだが居心地が悪くなってきている場合
スタッフ:「旅行は好きですか?」
Sさん:「そうじゃな、よう行った。」
スタッフ:「どこへ行きましたか?」
Sさん:「九州かな?」
スタッフ:「どうやって、行ったんですか?」
Sさん:「どうやってって」
スタッフ:「新幹線ですか?バスですか?」
Sさん:「どうじゃったかな・・・」
次第に声のトーンも低く、うつむきがちになっていかれる。
認知症の方は一般的に記憶力の低下がある為、記憶をたどった会話を連発しないことが大事です。
会話中に相手が困ったような、苦しそうな表情をしていたら、そのサインはもしかするとスタッフの無意識な質問のせいかもしれません。
それに気付かず話し続けてしまうと、その利用者にとってはスタッフと過ごすその時間が苦痛の何物でもなく地獄のように感じてしまうかもしれません。
そもそも質問形式の会話は自分のニーズを満たすための物であり、多用すると追いつめているような圧迫感を与えてしまいますので注意が必要です。
記憶をたどる会話から転換する会話の技術
重苦しい空気になった場合は、話の転換をする必要があります。
会話の技術としては相手が返答しやすいように、クローズドクエスチョンのような質問を投げかけることが重要です。
例えば今の感情を確認したり一般的な情報を相手に伝えることです。
今の感情:「眠たいですか?」「寒くないですか?」など
季節などの情報:「葉っぱが赤く色づき、すっかり秋ですね。」「今日は水曜日で、お肉が3割引きの日なんです。」など
スタッフの態度に不満を示した場合
スタッフ:「あはは、Sさんはいつもお元気ですね。」
Sさん:「そうじゃ、まだ、しっかり働いとるからな」
スタッフ:「そうなんですか、今おいくつなんですか?」
Sさん:「40ぐらいかな」
スタッフ:「あはは、お若いですね」
Sさんは不機嫌な顔になりました。
笑顔、笑いは常に有効的な手段にはなりません。
スタッフと会話している際、Sさんは40代で働き盛りの世界観を持っておられたのかもしれません、笑われる要素なんてないのに、笑われるなんて「何がおかしいの?」「馬鹿にしてるの?」となります。
スタッフは相手の世界観を否定することなく受け入れ、心を寄り添い合わせていくことが大事です。
言語コミュニケーションが難しいお年寄りと接する時の方法とポイント
発語・身体に障害がある寝たきりの高齢者の場合
高齢や認知症で認知の能力が衰えてると、私が隣にいても存在に気付かないことがあります。
なぜなら私が視界の中に入っていないからです。視界に映らないということはその方にとっていないのも同じことになります。
だからといって自分を認知してもらおうと、突然上から覗き込んだり顔と顔の距離を近づけたり遠ざけたりを頻繁に繰り返すと相手に圧迫感を与え不快にさせてしまいます。
スタッフ:「Kさん、おはようございます、体調はどうですか?」
スタッフ:「Kさんとお話がしたくて、会いに来ちゃいました。」
スタッフ:「お話ができるように体を起こしますね。」
スタッフ:「ベッドが動きます。高さはこのくらいで大丈夫ですか?」
スタッフ:「体調はどうですか?めまいなどありませんか?」
会話はベットのギャッチアップからスタートしましょう。
視線の高さを調節してから枕などを使い顔の向きを整えて視線を合わせます。
準備が終われば再度体調を確認し会話を始めます。
全身まひで発語もできない寝たきりの高齢者の場合
会話の内容は質問の言葉かけよりも情報を伝えることを優先します。
閉ざされた室内にずっといるため、外の変化・動きを知ることができません。
季節や天気の話題、旅行の土産話などがおすすめです。
はじめは独り言をつぶやく程度でいいと思います。
習慣づいてくれば、しっかりと相手に向けて話すことができるはずです。
とりあえず1か月続けてみてください。必ず成果に現れます。
ただし、短時間に多くの事を話してしまうと、聞いているお年寄りは頭の情報処理能力が衰えてきているので、はじめは言葉の理解ができても次第に何を言ってるんだろう。もう頭に入んないよと混乱し、しんどくなってしまうかもしれません。
さみしいコミュニケーションは一方通行、楽しいコミュニケーションは双方向
高齢者の方とは仕事だけの関係と割り切っている人は一方通行のコミュニケーションになりがちです。
相手に興味がないので情報を伝えるのみになってしまいます。
しかし、高齢者に寄り添った介護ができるスタッフは双方向のコミュニケーションができます。
【返報性の原理】サインを見過ごさない、サインに応答する
高齢者からのサインは小さなことが多く、それに気づく能力も大事ですが、そのサイン(反応)一つ一つにコメントを返していくことがよりよい関係を築くうえで重要になってきます。
普段目を閉じているのに、目が開いていた場合
「今日は○○さんの起きてる顔が見れてうれしいです。」とほほ笑みかける
「こんにちは」といいながら視線を合わせ、手を握ったら握り返してくれた場合
「挨拶を返してくれたんですね。ありがとうございます。元気みたいで良かったです。」と肩やほほをなでる(ボディタッチ)
些細なサインがその人の精一杯の意思表示の場合があります。
我々は些細なサインに対して誠実に、そして率直な感情を伝えていきましょう。
人はどうしても反応を求めてしまいます。
自分が話しかけてもなにも反応がなければ無視された、相手にされてないと寂しくなってしまいます。
その感情は寝たきりの方も同じく感じています。
もしかすると私たちより敏感に思われているのかもしれません。
反応がないから聞こえてないというわけではありません。
確実に聞こえています。
言葉としての理解ではなく、感情が言葉に乗って耳に心に響きます。
相手はご高齢で認知症の方もいます。
上述したように短時間に多くの事を話してしまうと聞いている方は、情報処理能力が衰えてきているので、はじめは言葉の理解ができても次第に何を言ってるんだろう。もう頭に入んないよと混乱し、しんどくなってしまうかもしれません。
相手を観察し、相手が何を欲しているのか、自分は何をしてあげれるのかに気づく能力が大事です。
まさに理想的な介護士ですね。
まとめ
冒頭にも書きましたが、ある特定の入居者に対してひいきではありませんが介護士が費やす時間に偏りがあるのは事実です。
平等なんてありえません。
この考え方は現場の素直な意見です。
誰しもが特別を求めるのは人間として自然の欲求ですので、家族や入居者が介護サービスの不平等さに問題を感じても不思議ではありません。
この問題を意識しているかいないかで介護人のレベルに大きな差が生じると考えています。
また、コミュニケーションを円滑に進めるためのテクニックとしてフランス発祥のユマニチュード、アメリカ発祥のバリデーションがあります。
機会があれば記事を書こうと思いますので楽しみにお待ちください。
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