医療の研究では、命を救うことや、痛みを取り除くことを重点的に研究してきたので、かゆみをテーマに取り組むのは遅かったそうです。
命を奪われるのは「痛み」であり、それに比べれば「かゆみ」なんてたいしたことはない、という考え方に医学会全体が支配されていたのです。
しかし近年、病的なかゆみは痛みと同じくらい、あるいは痛みよりもつらい感覚であることが世界的に理解されるようになりました。
昔は痛みを感じる神経とかゆみを感じる神経は同一のものであり、刺激が弱ければかゆみに、強ければ痛みになると考えられていました。
しかし現在では、かゆみは痛みとは別の神経経路を伝わる独立した感覚だと判明してきました。
人間は年を取ると、皮膚が乾燥してくることは皆さんご存知ですよね。体のあらゆる機能が衰えていきます。体内に水分を保持することが出来なくなるから、肌が乾燥していきますよ。という単純なことです。
肌が乾燥するとなぜ肌がかゆくなるのでしょうか?
かゆみを伝える知覚神経ですが、普段は真皮の内側(体の深いところ)でとどまっていますが、乾燥肌になると皮膚の表面近くまで知覚神経が伸びてくるために、日常生活のわずかな刺激でもかゆみを感じるようになるからです。
刺激に対して敏感になっているということですね。
皮膚の一番外側には、「角層」という皮膚の細胞が平たく積み重なった部分があります。0.02mmと非常に薄い部分です。
角層は外からの菌や、化学物質、紫外線などを体の中に入らないようにするのと、体内の水分の蒸発を防ぐ役割があります。この角層部分には、うるおいを保つ3つの装置があります。
1つ目は、「皮脂膜」。皮膚の一番外側にあり、皮脂と汗の成分が混じり合ってできた薄い膜です。皮膚表面をおおい水分の蒸発を防ぐ部分になります。
2つ目は、「天然保湿因子」。角層の中にあり、アミノ酸や尿素、塩類などからできており、水分を捕まえて離さない性質を持っています。
3つ目は、「角質細胞間脂質」。角質細胞と角質細胞の間のすき間を埋めている脂のことで、およそ50%がセラミドです。その脂で水分をサンドイッチ状にはさみ込み、逃がさないようにしています。
これら3つの装置は、加齢とともに衰えてきますので、肌が乾燥しやすくなるのです。
皮膚の症状の段階
軽度では、白い粉が吹いた状態ですが、高度になるにつれて浅いひび割れのような状態になり網目状のひびが入ると尋常性魚鱗癬(ぎょりんせん)という状態になります。
この老人性乾皮症は、30代の方でも発症することがあります。
実は皮脂の分泌は20歳前後をピークに年々減少傾向になるためです。
顔のニキビができやすいのは、思春期特有のものですよね。顔の脂が沢山出て、毛穴が油や皮脂汚れで詰まってニキビができます。
20歳を過ぎるとニキビはおさまってきた。という経験をしている人も多いのではないでしょうか?
話を戻しますが、このかゆい部分を掻きむしって、悪化させてしまうと上の写真のような「皮脂欠乏性湿疹」という状態になります。
乾燥だけでなく赤い発疹や小さなブツブツができたり、グジュグジュした状態になります。
スキンケアの方法
適切なスキンケアを行い、悪化させないことがポイントです。スキンケアではうるおいを保つ3つの装置をそれぞれ保湿剤の軟膏やクリームで補います。状態に応じて1つ、もしくは2つと組み合わせることもあります。
代表的なものとしては、皮脂膜の代わりをして水分の蒸発を防ぐのが、白色ワセリン。肌への刺激が少ないですが、少々ベタベタしている面もあります。
天然保湿因子の役割を補い、アミノ酸と水分の結合を助け水分を保持するのは、尿素軟こうやヘパリン類似物質、ヒアルロン酸などがあります。
角質細胞間脂質であるセラミドなどを補うスキンケア用品もあります。医薬品、医薬部外品、化粧品などさまざまなものが市販されていますので、自分の肌に合うものを選択して欲しいと思います。
保湿剤はいつどのように塗りますか?
保湿剤を塗るタイミングは、お風呂上がりにすぐ塗ります。また塗る時には、擦り込むのではなく、優しく、皮膚をなでるように塗るのがポイントです。入浴時もタオルで身体をゴシゴシ洗うことで、皮膚が壊れていきます。なで洗いが一番良い方法です。
皮脂欠乏性湿疹の場合には、保湿剤だけでは治療はできません。かき傷の部分などに保湿剤を塗ると、さらにかゆみを招く要因になることもあるので、注意が必要です。
湿疹が生じている場合は、ステロイドが入った塗り薬を用いて最初に炎症部分を治療することがポイントです。
湿疹をコントロールした上で、保湿剤を使って乾燥を防ぎます。また、ステロイドの薬にはレベルがあります。自分に合ったものを選択するために専門医に相談してもらいたいです。
高齢者の場合は、水分を保持するはずの筋肉が少なくなっているので、表面だけを覆うワセリンだけでは不十分なのかもしれませんね。
個人個人によって体質が異なりますので、自分に合った化粧品を選ぶことが大切です。高い商品を買えば成功するのではなく、自分のお肌と相談することが大切ですね。
保湿剤の種類
老人性皮膚掻痒症のように皮膚の乾燥によって起こる痒みを予防・改善する為には、「保湿剤」を用いて角質層中の水分量を保つことが重要です。
ひと言に保湿剤といっても、さまざまな種類があり、それぞれの特徴を理解し、使い分けることが大切です。
●水分を補給するタイプ 【ローション・クリーム】
- ヘパリン類似物質や、尿素、セラミドを含む。
- 乾燥した皮膚に塗る。
- ベタつきにくく、さらっとした使用感。
- 保湿持続時間は短い為、こまめに塗る必要がある。
●油脂膜をつくり、水分蒸発を防ぐタイプ 【軟膏・オイル】
- 白色ワセリンやオイル
- お風呂上りなど、皮膚に水分が豊富なときに塗る。
- 保湿持続時間は長いが、ベトベトした使用感がある。
また、痒みが強い場合には「抗ヒスタミン薬」の飲み薬や塗り薬を使用します。、湿疹がある場合は「ステロイド」の塗り薬で炎症を鎮めるなど、並行して対策を行うこともあります。
例えば、ガラスの汚れを綺麗にするには「外側」と「内側」から磨き上げる必要があります。
同様に、皮膚病も身体の「外側」を外用薬で、また「内側」を内服薬で改善するダブル対策法が2つの側面での対策が重要と考えています。
あなたの顔は老け顔それとも童顔
同じ年齢でも、若く見える人、老けて見える人がいるのはなんででしょうか?
パット見た時の印象が大事ですね。髪型や表情もそうですが、顔のしわやたるみが大きな原因です。もし、しわやたるみが無ければ、心に自信を持つことが出来、表情もより明るくなるはずです。
セラミドが不足すると、細胞間脂質がスカスカになり、張りがなくなり、しわができやすくなります。
50代のセラミドの量は、20代の半分になると言われています。
また、肌細胞の生まれ変わり(ターンオーバー)は28日周期だったのが、年を取ると45日周期になり生成機能も衰えてきます。
肌の各層は、細胞がレンガの様に積み重なっています。レンガを固定するためにセメントを使いますよね。セメントの役割をしているのがセラミドなどの脂質成分です。
薬の効果がないとき
ワセリンを塗っている人が、「薬を塗っているんだけど、全然治らないよ。」と言っている人は、乾燥で角層が傷ついてすきまだらけになっている状態なのかもしれません。
この場合の対応は、天然保湿因子の再構築なので、ワセリンではなく尿素、ケラチナミンが含まれた軟膏の塗布を優先しなければなりません。
ワセリンで保護は出来ますが、修復機能は乏しいのでこの場合は適切ではなかったのでしょう。正しい知識を持って、適切な治療方法を選択する必要があります。
乾燥肌になりやすい人は手のひらを見ればわかります。写真の手は、二人とも同じ40歳代ですが、手のシワがくっきり、はっきり見える場合は乾燥肌になりやすい人が多いです。
抗ヒスタミン薬
かゆみに対応する薬は、抗ヒスタミン薬ですが、薬の効果はほとんどありませんでした。なぜかというと、かゆみを起こすのはヒスタミンだけではないことが最近の研究で分かりました。
- 皮膚が抗原物質(アレルゲン)との接触や皮膚に刺激を与える
アレルゲンとは具体的に汗・ダニ・ダニのフン・化学物質・洗濯洗剤の残り・服の材質・食べ物など
- 抗原物質は身体が異物として認識し、抗体・免疫細胞が活動し始める
- 皮膚の肥満細胞がヒスタミンなど放出し、体内ではれ、かぶれ、かゆみを引き起こす
- 放出されたヒスタミンが感覚神経に作用して、脳に信号を送る為、かゆみを認知する
- ヒスタミンの作用により血管が広がって血漿成分があふれ出して赤くはれる
- 皮膚をかきむしって、角質を壊す
- 菌が体に入り込み炎症の悪化
じんましん、湿疹・かぶれの原因は?
じんましんの原因は食物、薬、感染症(風邪など)、肝臓病、膠原病、日光、暑さ・寒さ、運動、ストレスなど様々ですが、半数以上(6-7割程度)が原因不明とされています。
何らかの原因に対するアレルギー反応と言われていますが、血液検査でもその原因が分からない場合が多く、どのようなきっかけで出たかメモを取って原因を特定し、原因を避けるようにしましょう、予防することが大切です。
湿疹・かぶれの原因は接触性皮膚炎によるものと、刺激によるものに大きく分けられます。かぶれの具体的な原因は、化粧品、ピアス・時計(金属)、マンゴー、うるし、毛虫、草花、ほこりなどがあります。刺激の具体例としては、衣服の擦れ、汗などの刺激、洗いすぎ・擦りすぎ、気候(暑さ・寒さ、乾燥)などがあります。
じんましん、湿疹・かぶれ共に皮膚の乾燥、寝不足、アレルギー、免疫低下など自身の状態にも大きく左右され、前記の原因を受けても発症しない場合もあります。遺伝的な因子よりも生活環境の因子の割合が強く現れます。
免疫とアレルギー反応
アメリカのアリゾナ大学がオフィス内にどれくらい細菌がいるか調査したところ、電話の受話器で1平方インチ(1インチ:2.54センチメートル)当たり25.127個、机が20.961個、パソコンのキーボードで3.295個の細菌を検出したといいます。
このように私たちの日常生活のなかでは、常に多量の細菌が存在していますが、それでも病気にならないのは、体に備わった免疫システムのお蔭なのです。(大腸に住んでる菌の数、600兆個以上、1000種類)
私たちの体には、ウイルスや細菌などの異物が入ってきたときに体内に「抗体」がつくられ、これら外敵をやっつけようとする「免疫」というしくみがそなわっています。
ワクチン、予防接種がこの免疫システムを利用していますね。病気にならないぐらいのほんのわずかな菌を体内に入れて、体内(骨髄)で抗体をつくるようにし、感染を防ぐようにしています。
ところが、この免疫のしくみが、食べ物や花粉など私たちの体に害を与えない物質に対しても「有害な物質だ!」と過剰に反応して、攻撃をし過ぎる結果、逆にマイナスの症状を引き起こしてしまうのが「アレルギー」です。本来は体を守るはずの反応が、自分自身を傷つけてしまうアレルギー反応に変わるのです。
かゆみの反応は一種のアレルギー反応と考えるドクターもいます。
最新の研究結果から得られた最良の対策方法
- 紫外線に当たる
- 保湿剤の塗布
とても効果的なのは紫外線療法です。紫外線を肌に照射すると表皮に侵入していた神経線維が後退し、かゆみが軽減することが実証されています。
日光を浴びることによりビタミンDが体内で作られます。私たちの健康になくてはならない栄養素で、小腸内でカルシウムの吸収を助けてくれます。カルシウムは骨の形成や強度を補助してくれます。
健康維持のため一日15分から30分程度、屋外での散歩もしくは庭での日光浴を行いましょう。
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