認知症者への基本対応
- 受容(否定しない、認知症者の世界観を受け入れる)
- 傾聴(自分のききたいことではなく、相手が話したいことを聞き出す)
- 怒らない(自己覚知によるアンガーマネジメントで対策)
物とられ妄想事例:
ある日の午後、施設入居者のAさんは「いつもの場所」に「財布がない」と心配そうに探しています。
この時スタッフBさんは「え、財布がないの?一緒に探しましょう」等と言って、一緒に探してあげることが大事です。
しばらく探すうちに財布のことを忘れ、落ち着くことがあります。
この時、「自分の言い分を聞いてくれて、一緒に探してくれた優しい人」という温かい感情がAさんの心に残ります。
認知症の生活はこの繰り返しで、物忘れは多少進んでも、家族と元気に暮らすことも可能となります。
物とられ妄想の対応:
相手の言い分を否定した場合
物取られ妄想が起きた時に、家族やスタッフが「自分で場所をかえたのに、忘れた」と怒ったり、「家族が盗むわけがない」とAさんの言い分を否定すると、「私が困っているのになぜ怒るの、やっぱり、あなたが財布を盗んだのね」、「私がいつも怒るから、私のことが嫌いなのね、だから私を困らせるために財布を盗んだのね。」と悪い妄想が膨らみます。
スタッフはAさんの意見を否定 → Aさん興奮 → 妄想 → 介護拒否 → 暴力 といったように負の連鎖を生みます。
財布のことは忘れても、「いつも怒る怖い人」という感情だけが残ってしまいます。
すると、「この人は怖い人、嫌な人」という感情から、介護に手を貸そうとすると抵抗したり、暴力を振るったりするようになってしまいます。
認知症は、記憶などの知的機能が衰えても、感情の機能は衰えていませんどうして叱られているのかはわからないけれど、叱られていることだけは理解しています。
そして、何について怒られたかという記憶は忘れても、この人に不快な気持ちにさせられたことは覚えています。
このような嫌な気持ちが蓄積してしまうと、行動異常や妄想などが悪化し悪循環に陥ってしまいます。
スタッフが財布を見つけた場合
スタッフ「Aさんの財布見つけましたよ。これですか?どうぞ」
Aさん「ありがとうね、どこでみつけたの」
スタッフ「枕の下です」
Aさん「あれ、お金が無くなっている」
Aさん「あなたが盗んだんでしょう、返しなさい」
スタッフ「はぁっ?」
とAさんの妄想が膨らむ可能性もあります。
ですのでAさんが財布を見つけてもらうように「Aさん、枕の下は探しましたか?」「いつもの場所は探しましたか?」など声をかけてみてください。
認知症対応のポイント:
・ケアの統一
施設での生活なら、対応するスタッフによって必ずばらつきが出てきます。ケア会議などで早期にケアの統一が必要です。
不適切な行動をとってしまうと相手は混乱し不安になって対応が困難になってしまうからです。何度も同じことの繰り返しで精神的に疲弊してきますが、頑張って同じ対応を繰り返しましょう。
介護者のお気持ちは十分わかりますが、感情で対応してしまった後の対応は本当に面倒臭いんです、いつもと同じ対応をしておけばよかったと後悔するだけですので、忍耐強く頑張ってください。
いいえ、忍耐強く頑張らなくて良いんです。認知症だからこれぐらい仕方がないなど、ゆったりとした思考を持つことをお勧めします。
・ゆとりある介護
心に余裕を持たせないと双方が倒れてしまいますからね。
イライラが溜まって、手が出そうになった場合は無視してその場を離れるのは良いと思いますが、それが習慣化され相手の存在を無視した介護になるのだけは避けましょう。
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