道に迷う高齢者

認知症者への基本対応

  • 受容(否定しない、認知症者の世界観を受け入れる)
  • 傾聴(自分のききたいことではなく、相手が話したいことを聞き出す) 
  • 怒らない(自己覚知によるアンガーマネジメントで対策)

徘徊事例:

道に迷う高齢者

施設入居の男性Aさんは、1日中落ち着くことなく、フロアを歩き回られます。

夕飯が終わり、他の利用者様も各自お部屋に戻った20時頃、フロアはとても静かになるのですが、その時間帯からAさんの活動は活発になります。

辻褄の合わない独り言を言いながら、廊下を端から端まで歩き、時には他者の部屋に入ろうとします。

また職員がオムツ交換のために部屋に入る時、一緒に中に入ろうとするため職員は困り果てています。

徘徊の原因:

認知症の周辺症状には、全て理由があると捉えた上で、なぜ徘徊するのか、なぜあの時間なのか、を探ります。

Aさんがここにくる前までの環境、習慣はどうだったのか、そこにヒントがありますのでご家族にお話を伺いましょう。

徘徊の対応:

ご家族様にAさんの人柄や仕事など人生の背景を伺いました。

Aさんはとてもまじめで几帳面な方で、家では寝る前に必ずAさんが戸締りを確認していたそうです。

また、会社では某大企業の総務部長をしていたそうです。

ご家族様からの話をお伺いしていると、「自分がしっかりと管理しなければ」と責任を感じておられたのではと思いました。

つまり徘徊の目的は戸締り確認や家族の安否確認です。

その後、夜の行動を観察してみました。廊下のカーテンを閉め直したり、持っている杖で窓を軽く叩いてみたり、鍵のかかった窓を開けようとしてガタガタ音を立てたり何か確認していました。

独り言に耳を傾けると「よし。良いガラスだな」「こっちはどうだぁ?」と、泥棒対策の確認をしている様でした。

どうやら、戸締り確認が目的であることは間違いではない様です。

寄り添って歩く介護士

Aさんに「戸締り確認ありがとうございます」と声を掛けてみました。すると、「ホテルの人ですか?いやいや、そちらもご苦労さん。まだ寝ないのかい?」と返事があり驚いたのですが、「私もここの戸締り確認したら、寝るつもりです」と話し、しばらく一緒にベランダや非常口の確認、カーテンの閉め直しなどを行いました。

すると、しばらくして本人から「寝ようか」との言葉が出ました。そのままスムーズに自室まで行き、その日は朝までぐっすりとお休みされました。

役割を果たし、満足してくれたのかもしれません。

この日以外にも同じ様な対応をした事で、だんだんと夜中の徘徊が減りました。

目的もなく歩き回ってしまうのは、自分の居場所が分からなくなったり、外出した目的自体を忘れてしまうためです。

しかし普段から近所の人に声をかけてもらっいると安心しますよね。

自分は知らないけど、自分のことは知ってくれている、自分の存在を認めてくれる場所なんだと安心することが出来ます。

逆に、無視されていると孤独感、寂しさ、ここにいたくないという危機感を持つようになり、行動に悪い変化が現れます。

認知症対応のポイント:

・認知症の理解と認知症者の理解

  • 周辺症状にはすべて理由がある
  • 性格や生活習慣など

・周辺症状をなくす魔法の言葉

  • 認知症者を理解すると、行動の理由が分かってきます。
  • どのような対応、言葉を欲しているのか、それがわかれば周辺症状をなくすことができます。

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By なら

介護業界で15年ほど勤務、近年はベトナムの介護施設で管理者として働く。奥様はベトナム人、息子一人。ベトナム語を勉強し、幾度も挫折を繰り返し復活しています。

One thought on “周辺症状の改善事例 No5 ~徘徊~”

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